補助金審査員に刺さる“深掘り”事業計画書──技術者だからできる書き方

補助金審査員に刺さる“深掘り”
事業計画書
─技術者だからできる書き方─

1. はじめに:
事業計画書に“技術者視点”が
不可欠な理由

第4回の中小企業省力化投資補助金の公募の公開がなされ、補助金申請に興味のある企業様は、書類準備の計画を始めているところかと思います。
参考:第4回「中小企業省力化投資補助金」での変更点を解説

補助金申請を行う際、最も重視される書面が「事業計画書」です。特に中小企業省力化投資補助金(以下、「省力化補助金」)など、設備導入・自動化を前提とする補助金では、単に「設備を買って効率化する」旨を記すだけでは、審査員には響きません。

この事業計画書が厄介です。

なぜなら、審査側(外部有識者を含む)は「それが本当に効果を生むか」「実現可能性はどうか」「将来的な展開があるか」など、技術的・論理的な裏づけを強く重視するからです。省力化補助金の公募要領でも、事業計画書は外部の審査委員会が評価をおこなうと明記されています。
参考:中小企業省力化投資補助金

技術者でなければ、どうしても「結論(自動化すれば効率化できる)」から書き始めてしまいがちです。しかし、審査員には「なぜこれが最適解か」「他の案では弱点はないか」「将来どう進化できるか」が伝わらなければ、高い評価は得られません。
本稿では、技術者だから書ける“深掘り”視点を軸に、効果的な事業計画書の書き方を、段階的に解説します。

2. 申請内容を記載する事業計画書とは

2.1 省力化補助金の特色と求められる記載

まず押さえておきたいのは、省力化補助金は“設備導入そのもの”ではなく、“その設備導入がもたらす効果・波及”を重視する制度であるという点です。
公募要領では、設備・システム選定にあたって「人手不足解消に効果のあるデジタル技術等を活用した専用設備(ロボット、センサー、ICT 等)」を選定することが条件とされており、事業計画書で「補助事業における省力化投資の効果や省力化対象工程・方式」などを記載することが求められています。
参考:中小企業省力化投資補助金

つまり、「何を」導入するかだけでなく、「なぜそれを選ぶのか」「どのように効果を発揮するか」「どこまで拡張できるか」まで記載することが、採択を左右します。

この点は、ものづくり補助金との大きな違いでもあります。ものづくり補助金においては新製品開発・技術革新性などが重視されますが、省力化補助金では、現実の工場ラインに即した「合理性」「効率化効果」「実務的運用性」がさらに問われる傾向が強いのです。

2.2 補助金初心者に陥りやすい “結論先行型” の罠

非技術者が書くと、まず「○○ 自動化設備を導入して業務効率を 30 %改善します」という結論から書き始めてしまうことが多いです。しかし、それだけでは「審査員に納得感を持たせるだけの流れ」が成立しません。

こうした書き方だと、次の疑問が審査員にすぐ湧きます:

  • なぜ業務効率が今低いのか?

  • 他の改善策ではなぜ対応できなかったか?

  • なぜその設備構成・仕様にしたのか?

  • 投資効果は本当にその水準に達するのか?

  • 将来の成長や拡張可能性はあるか?

これらに応えない文章は「感覚論」「思いつきレベル」に留まり、説得力を欠く構成となってしまいます。審査員からすれば、技術的根拠・予測性・リスク対応が不透明な計画書は、評価を下げる要因になります。

3. 技術者視点で書くポイント

技術者の強みを活かすなら、以下の3点を意識して「深掘り」する構成にするとよいでしょう。

3.1 なぜその自動化が必要になったのか? — 課題背景の掘り下げ

まず、なぜ自動化・省力化が必要なのかを、問題の「原因 → 課題 → 仮説形成」の流れで記述します。

具体的には:

  • 現行ラインでの各工程の サイクルタイム段取り替え時間稼働率・ライン稼働時間停止要因(待機・段取り・故障) などをタイムスタディや実測で把握する。

  • 稼働実績と不稼働時間の割合を パレート分析 などで可視化し、主要ボトルネックを特定する。

  • 現場ヒアリングや作業観察から、「段取り替え頻度」「工程間搬送の手待ち」「品質検査手戻り率」など、定性的な不効率要素も洗い出す。

  • これらを工程図・フロー図・ラインレイアウト図に落とし込み、「改善対象工程」が具体的にどこかを明示する。

こうした下地を示すことで、読者(審査員)に「この業務には改善の余地がある」という納得感を与えられます。これがないと、「自動化すれば効率化する」だけの机上の空論になってしまいます。

3.2 解決策が “その案” しかないか? — 複数案の比較と選定理由

優れた計画書では、「この案しかない」ではなく「他案を検討し、その中で最適解を選んだ理由」まで書かれています。

具体的には:

  • 複数案(たとえば、改善案 A:部分自動化+手動併用、案 B:完全自動化、案 C:半自動化+補助支援装置併用など)を挙げ、それぞれの コスト・効果・導入難易度・リスク の横並べ、メリット・デメリットの可視化やDA表で評価するなど。

  • 選定にあたって、外部技術動向(例えば汎用ロボット、通信基盤、IoT センサーなど)や将来拡張性も候補案の評価軸に含める。

  • 仕様や構成、仕様上のトレードオフ(速度 vs 精度 vs コスト)を明示し、「なぜこの性能を選ぶか」も言及する。

このようにすることで、単なる “思いつき案” から、技術的な裏づけに裏打ちされた “合理的案” に格上げできます。

3.3 将来性・波及・シナジーを描く

導入後の拡張性・事業インパクトを示すことも、差をつける重要な視点です。

具体的に書ける内容として:

  • 他工程/他部門への展開可能性(同様構成を別ライン/別工場に横展開できるか)。できれば間接部門との連携など印象的です。

  • システムプラットフォーム化できる余地(例えば、データ収集基盤、IoT 化、AI 活用などを見据えた構成)

  • 投資後の次フェーズ改善ロードマップ(第 2 段階、第 3 段階の自動化構想を明示)

  • 外部環境変化(働き手減少、DX 推進、法規制変化など)を見据えた柔軟性

  • 他サービスとの連携可能性(保全サービス、遠隔監視、予知保全、故障アラームなど追加可能性)

これを盛り込むことで、審査員に「将来的にも成長し得る計画」「補助金の波及効果が高い投資」として評価されやすくなります。

4. その他押さえておきたい記載ポイント

技術・構想以外の要素も、抜けがあると評価を落とします。以下も忘れず盛り込みましょう。

4.1 削減した労働時間・工数の活用先を具体的に書く

単に「時間が捻出できる」では弱いです。

  • 具体的な業務名(品質検査、保全、技術開発、顧客対応、定期点検、教育業務など)を記載

  • どの社員がどの業務を担うかを明示

  • 技能向上・再配置の計画(OJT、研修、スキル制度化)

  • どの程度の付加価値を創出するか(例:追加売上率、改善率)

こうすることで、「人を減らす」ではなく「能力を高めて付加価値を増やす」構図になります。

4.2 実施体制・スケジュールの具体化

実行可能性を示すためには、体制とスケジュールは必須です。

  • 責任者、実務担当、外部ベンダー(SIer、機械メーカーなど)の役割分担

  • ガントチャート形式で、導入準備・設計・製作・搬入・試運転・教育・本稼働までのマイルストーン

  • リスク対応スケジュール(予備日、調整期間)

  • 工程間段取りの流れ、物流搬送動線、立上げ試運転工程

これらが曖昧だと、「技術的にはいいが実際に動かせるか不安だ」と判断される可能性があります。

4.3 資金計画・回収シミュレーション

設備投資・導入コスト・保守費用・運用コストを含めた収支予測は最重要です。

  • 投資額(設備代、設計・施工費、据付・試運転費等)

  • 補助金額/自己負担額の内訳

  • 年次ごとのコスト削減見込(人件費削減、稼働効率化、省エネなど)

  • 回収期間(何年で初期投資を回収できるか)

  • ROI(投資利益率)算定

  • 感度分析(効果率が ±10〜20 %ぶれた場合でも回収可能か?)

これらを複数シナリオで比較できるように示すと、説得力が増します。

4.4 リスク管理と対策

技術的にはどうしても不確実性があります。リスクを放置するよりも、正面から説明しておく方が評価されます。

  • 故障・トラブル発生時の代替手段(部分手動化、冗長系設計、保守契約内容)

  • ソフトウェア不具合・バージョンアップ影響、連携系統断線リスクなどの対策

  • 運用開始遅延・納期遅延リスクとその緩和策

  • 保守メンテナンスの体制・コスト計上

  • 災害・外部要因(停電、震災、材料供給遅延など)への対応策

リスクと対応をセットで記すことで、「無理な理論だけの計画」ではなく「現場感覚を踏まえた実行性ある計画」と見なされやすくなります。

4.5 客観資料・裏付けデータの添付・参照

文章だけで語るのではなく、数字・データ・外部参照を活用して説得力を補います。

  • メーカー仕様書、性能データ、他社導入事例、業界統計など

  • 実験・試行投入データ、実証稼働記録

  • 公的文献・論文・報告書データ

  • 標準仕様表・仕様比較表

  • グラフ・図表・写真・フロー図など視覚情報

これらを本文中にリンク・挿入し、「根拠を自ら提示する」書き方を心がけるとよいでしょう。

5. まとめ:深掘りで審査員に響く事業計画書を目指そう

ここまで述べてきたように、補助金申請の事業計画書は、単なる設備記載・定量化だけでは差別化できません。**技術者視点で「因果構造」「案の選定根拠」「拡張性・将来性」「リスク対策」**まで落とし込んだ構成が、審査員の心をつかむ要諦です。

特に、以下の流れを意識して書くと、説得力のあるストーリーになります:

  1. 現状分析 → 課題抽出 → 改善仮説

  2. 複数案比較 → 選定根拠提示

  3. 詳細仕様/性能論拠

  4. 効果算定(主シナリオ/代替シナリオ)

  5. 実施体制・スケジュール

  6. リスクと対応

  7. 拡張可能性・波及性

  8. 労働時間削減後の活用先

  9. 客観データ・外部根拠の併記

この構成をもとに、まずは骨子を文章化し、各項目に “深掘り要素(数値・根拠・複数シナリオ・図版・リスク)” を追加していくと、自然と完成度の高い事業計画書になります。

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