ものづくり補助金だけじゃない!
中小企業の“守り”を支える
省力化投資補助金のススメ
1. “ものづくり補助金”の概要と目的
補助金制度を語るとき、まず名前に挙がるのが「ものづくり補助金」(正確には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」など)です。多くの中小企業経営者や支援機関がその存在を知っており、申請経験も多い制度です。
1.1 ものづくり補助金とは
ものづくり補助金は、 革新的な製品・技術・サービスの開発 や 生産プロセスの改善 に対して、設備投資や試作開発費用、システム導入費用等を補助する制度です。
具体的には、既存事業の延長線上ではなく「新しい価値を生む」、あるいは 付加価値を高めること を重視する事業計画が求められます。
要件として、補助対象事業が「付加価値額を年平均一定率で増加させる」ことなどが課されるケースもあります。
このような性格から、ものづくり補助金は「攻め」の投資、新製品・新技術への挑戦などを後押しする補助金としての位置づけが強いです。
ただし、要件が厳しく、計画性・将来性・研究開発性などの審査観点が重視されるため、準備コストが高く、採択されるハードルも高くなります。
2. 中小企業が抱える“現場の困りごと”
ものづくり補助金が重視する「新製品開発・価値創造」は重要ですが、多くの中小企業は下請中心で、新製品とは縁がありません。また日常レベルで切実に抱えている課題は、むしろ「現行事業を安定させ、足元を守ること」ではないでしょうか。以下のような悩みが典型的です。
2.1 人手不足
少子高齢化と若年層の都市集中により、地方の中小企業では若手の確保が難しい
ベテランや中堅社員を失うと、補充が効かないケースも多い
同じ仕事量をこなすにはより効率化が求められるが、その余力がない
2.2 外国人労働者の導入・受け入れの制約
技術的な専門性のある仕事だと、即戦力化が難しい
労務管理や環境整備コストがかかる
- 言語、習慣上のコミュニケーション障害がある
2.3 技術伝承・ノウハウ継承の難しさ
高齢化した職人や技術者があと何年働けるかわからない
属人的なノウハウがブラックボックス化しており、誰にも教えられない/形にできていない
作業標準化や工程管理の仕組み化が追いつかない
これらは単なる“困りごと”ではなく、それぞれが会社の将来を揺るがすリスクです。
新製品開発には資源を割けず、日々の工程や業務の効率化を図る余地も小さい。こうした悩みを抱える中小企業こそ、補助金の使い方を選ぶ必要があります。
3. “中小企業省力化投資補助金”を勧める理由
こうした現場課題を解決するアプローチとして、私がおすすめしたいのが 中小企業省力化投資補助金 です。ものづくり補助金とは性格が異なり、むしろ“守りと効率化”の観点からの補助制度です。
3.1 中小企業省力化投資補助金とは
- 正式名称:中小企業省力化投資補助事業(一般型・カタログ注文型)
※参考:中小企業庁 ミラサポ 省力化投資補助金 - 目的:人手不足解消に資する 汎用的な省力化装置・設備・システム を導入して、業務効率化・売上拡大を図ること
- 類型:
- カタログ注文型:あらかじめ登録された省力化製品から選ぶ方式
- 一般型:会社オリジナルの機械・システムなど、カタログになく個別設計の設備も対象 - 補助率・上限額など:
- 補助率は 1/2 以下、あるいは小規模事業者等には 2/3 まで対象となる場合あり
- 補助上限額は 最大1億円 という規模の設定も可能(条件付)
- ただし、補助対象経費に対して一定金額以下の補助枠など制限もあり
なお、第4回公募要領が 2025年9月19日に公開され、11月上旬に申請受付を始める見込みという案内があります。
参考:中小企業庁 第4回公募要領
3.2 なぜ省力化投資補助金を推すか:現場課題への直結性
ものづくり補助金が「新しい価値の創出」に重きを置くのに対し、省力化投資補助金は 人手を減らし、既存業務を効率化する という性格が強い点が大きな違いです。
現場の悩み(人手不足、技術伝承、効率化要求など)は、まさに “既存業務を省力化する” ことによって緩和され得ます。
たとえば、熟練技術者が担っていた作業をセンサー制御・自動機で代替したり、工程モニタリングシステムを導入して異常検知を自動化したり、これらは「革新」ではなく「改善・効率化」の領域です。
こうした改善投資を、補助金で支援してもらえる制度こそ、省力化投資補助金の強みです。(※詳細な制度要件や公募要領内容については、公式情報を参照してください)
4. ものづくり補助金 vs 中小企業省力化投資補助金:比較分析
では、両制度を切り分けて理解するために、複数の観点で対比してみましょう。
| 比較観点 | ものづくり補助金 | 中小企業省力化投資補助金 |
|---|---|---|
| 主目的 | 新製品・新サービスの開発、高付加価値化 | 省力化・効率化、自動化・DX |
| 要件指標 | 付加価値額の向上など | 労働生産性の向上など |
| 補助対象 | 試作品、開発費、設備、システム導入など多様 | 設備、システム、オーダーメイド対応可能(一般型)や既存製品対応(カタログ型) |
| 補助率・上限額 | 大規模枠では高額対応(例:8,000万円など) | 最大1億円規模も可能(条件付) |
| 補助事業期間 | 通常は較短(設備導入型枠など) | 交付決定から最大18カ月まで実施可能 |
| 収益納付義務 | 補助金によっては利益連動型返納あり(制度による) | 収益納付を求められない点が明示されている |
| 難易度・審査 | 開発性・将来性・市場性・技術性など厳格な評価 | 効率化・省力化を基軸とするため、要件のハードルが比較的緩和される可能性あり |
| その他制約 | 直近期のものづくり補助金交付を受けていると制約あり(併用制限) | 他補助金との併用が可能なケースあり(ただし要件確認が必要) |
4.1 指標の違い:付加価値 vs 労働生産性
ものづくり補助金では、「付加価値額」を一定率で伸ばすことが要件になることがあります。
一方、省力化投資補助金では、「労働生産性」を向上させる(年平均成長率目標など)ことが要件になることがあります。
この違いは、申請事業の方向性を左右します。「売上や価値を劇的に伸ばす」ことを目指すならものづくり補助金、「同じ仕事を少ない手でこなす」「効率を高める」ことを目指すなら省力化投資補助金が適合しやすいのです。
4.2 補助上限とコスト負担
ものづくり補助金の大規模な枠(たとえば省力化オーダーメイド枠)は、補助上限額が高くなることがありますが、それだけ事業計画の審査ハードルも高まり、準備工数・リスクも大きくなります。
一方、省力化投資補助金では、上限額が高めに設定されているものの、補助率や補助対象経費の制限がかかることも多く、導入プロジェクトの規模感に合わせて設計すれば現実的な活用が可能です。
4.3 使いやすさ・手続きの観点
省力化投資補助金には カタログ注文型 という簡易申請手法があり、登録済み機器を選ぶだけで申請できる形式もあります。これにより、オーダーメイド構築が難しい企業でも導入しやすくなっています。 ただし多くの製造業では現場の改善が浸透しており、カタログ型は活用しずらいという声をよく聞きます。
また、交付決定から最大18カ月まで事業実施できる点も、設備導入・設計調整など余裕を持って進めたい企業にとって有利です。
ただし、ものづくり補助金も制度によっては汎用設備や既存技術の導入を認める枠(省力化系オーダーメイド枠など)が設けられており、それとの重なりある部分での選択は慎重さが求められます。
4.4 併用可能性と制約
省力化投資補助金は、他の補助金制度と併用可能なケースもあります。ただし、併用するにはそれぞれの制度が定める要件を満たす必要があります。
一方で、ものづくり補助金を過去に交付されたばかりの企業には、再度申請できない縛り(交付決定から一定期間を置くなど)の制度上制限がある場合もあります。
5. 中小企業省力化投資補助金をうまく使って悩みを解決しよう
最後に、私見と実践的観点を交えながら、どのようにこの補助金を使えば中小企業の悩みを解消につなげられるかをまとめます。
5.1 ステップ1:自社課題の可視化と目標設定
補助金制度はあくまで手段です。まず、社内で次のような問いを立ててみましょう:
「この業務・工程を省力化できれば何時間削減できるか?」
「ベテラン技術者が担っている属人的作業を、システム化・機械化できる部分はないか?」
「人手不足により発生しているコスト(残業、外注、安全リスクなど)はどれくらいか?」
「将来、人手がさらに減ったとき、事業継続に支障をきたす業務は何か?」
これらを可視化して、「どの工程をどう改善すれば何%効率化できるか」を定量目標として設定できると、補助金申請も強いものになります。
5.2 ステップ2:補助金タイプ(カタログ/一般型)の選択
先に述べたように、 カタログ注文型 は機器選定が簡易で、導入までの手間が比較的低いです。省力化機器を既製品で導入したい企業には適しています。
一方、業務に即したオーダーメイド機器・システムを導入したい場合は 一般型 を選択します。ただし設計・調整を含むため、事前の仕様策定やベンダー選定、見積取得などの準備が不可欠です。
一般型を選ぶ際は、「自社業務を形にできるベンダー(設備メーカー、システム会社など)」を早めに探し、共同で計画を練ることをおすすめします。
5.3 ステップ3:申請準備と申請戦略
GビズIDプライムアカウント の取得が必須(時間を要するため、申請前に準備しておく)
事業計画書で説得力を出すため、「改善後の効果(削減時間・コスト・歩留まり改善など)」を具体数値で示す
複数ベンダーから相見積を取得し、コスト比較と妥当性を示す
導入後のモニタリング・報告体制(効果検証手順)をあらかじめ設計しておく
ものづくり補助金や他補助金との併用を想定するなら、それぞれの制度の交付済・申請済状況や過去利用歴を把握しておく
これらの準備を丁寧に進めることで、申請の成功確度を高めることができます。
5.4 ステップ4:導入と運用、効果検証
補助金交付が決定したら、以下を意識して導入・運用を進めます:
設備・システム設置後、実運用を始めるまでの調整(試行運転、立ち上げ支援)を入念に
導入後、定期的に稼働データを取得し、目標との差異を分析
改善がうまくいかない部分があれば仕様変更や改良を行う
効果が出た部分を社内で展開し、他工程への横展開を検討
実績報告書の作成時、補助金制度で求められるフォーマットに合致させる
このサイクルを回すことで、補助金の枠を使うだけで終わらず、実際の生産性向上につなげられます。
5.5 ケース活用例(仮想シナリオ)
例として、ある金属加工会社(従業員20名規模)が以下の課題を抱えていたとします:
熟練工が手作業で行っていた検査工程がボトルネック
加工機から出力されるデータをリアルタイム監視できず、不良品率の低下と歩留まり改善が見込める
若手技術者育成が追いつかず、作業の指導者に負荷が集中
この会社は、検査装置+AIによる画像認識による自動検査ラインを導入することを検討し、省力化投資補助金(一般型)を使って設備導入を申請します。計画書には、
現状:検査工程に月80時間かかっている
導入後:月20時間まで削減可能
加工不良率が 1.5% → 0.5% に改善見込み
投資額:3000万円、補助率:1/2 → 補助額:1500万円
という数値根拠を入れて申請し、無事採択。導入後はデータモニタリングで稼働率を追い、目標との差を可視化・改善を重ね、さらなる横展開を図ります。
このような例では、まさに “ものづくり補助金ではなく省力化投資補助金” の領域で、導入効果が実感できるケースです。
省力化投資補助金を“使える武器”に
ものづくり補助金は確かに注目度が高く、多くの企業にとって魅力的な制度です。しかし、それが万能というわけではありません。特に、日々の業務効率化や人手不足・技術継承といった現場の悩みに直面している中小企業にとっては、 中小企業省力化投資補助金 のほうが実践的で効果を出しやすい選択肢となる可能性があります。
これまで列挙したように、
省力化投資補助金は「効率化・自動化」を目的とし、既存業務の延長線で使いやすい
複数の補助金制度と併用できる可能性もある
手続きの簡易型(カタログ注文型)や、柔軟な事業実施期間(最大18カ月)が使いやすさを後押し
という特徴があります。
ただし補助制度は常に変動し、公募要領や要件も改定され得ます。公式情報(中小企業庁、補助金事務局サイト等) を確認し、最新の公募要領や条件を確認することが必須です。
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中小企業省力化投資補助金は中小企業に対し、省力化を推し進める投資に対して、最大2/3を補助する大変心強い制度です。
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